こんにちは、九十九かなめです。
自分自身、1コマを納得いくまで何度も消しては描き直す癖があり、とても原稿スピードが遅いです。
そんな私でも、かつては1度のイベントで新刊2冊を継続して発行していた時期がありました。
現在は同人活動を休止しており過去の栄華となってしまいますが、どの発行物に対しても思い入れがあり、妥協した部分は無いと自信を持って言えます。
今回は、筆の遅い中の人が実行していた、CLIP STUDIO EXでの原稿時短術をお教えします。
この記事の内容
原稿時間短縮テクニック
ノンブルを予め入れる
ノンブルの入れ忘れに、脱稿後に気づいた経験は無いでしょうか。
原稿に慣れている私自身もその失敗を繰り返したことがあり、以降はこれらのことを徹底しています。
- 印刷所テンプレートを使用する場合、原稿作成に取り掛かる前にノンブルを入れる
- 印刷所テンプレートを使用しない場合、設定の時点でノンブルを入れる
脱稿後にノンブルを入れるとなると、手間はなにより、脱稿してなお作業をすることでやる気が半減します。
ちょっとした注意が、後々のスムーズな入稿に繋がります。
参考 文字情報(ノンブル・奥付)を設定するCLIP STUDIO使いやすいように使う
CLIP STUDIOは基本的にはどの機能も使いやすいですが、コマ割りツールだけはどうしても慣れることができませんでした。
というのも、元々SAIを使用して印刷用原稿を作成していたため、「1コマずつレイヤーを分ける概念がない」ことが由来です。
どんなに解説や講座を見ても分からないと悟った時点で、正規の方法ではなく、自分にとって使いやすい方法を優先することにしました。



現在までに発行した全ての同人誌は、外枠を作ってからコマを分割していく方法で原稿を作成しています。
①外枠作成
「コマ作成」→「長方形コマ」で外枠を作成します。
②コマを分割
「コマ枠カット」→「枠線分割」でコマを分割します。
③すべてのコマを描画する
すべてのコマの絵柄を描き入れ、最終的に1枚のレイヤーかフォルダにまとめます。
もし、同じようにコマ割りツールに慣れない方がいたら、ぜひこの方法をとってみてください。
「正しい方法」のみに囚われず、自由な使い方をしてみてください、という教えでした。笑
コマ割りと同時に写植をする




通常の原稿はペン入れの後に吹き出し、写植と進めていきますが、私の場合はコマ割りをした時点で写植をし、吹き出しを書き入れていました。
①コマ割りが終了した段階
②写植
「テキスト」ツールを使い、セリフを流し込みます。このとき、セリフに合わせてフォントやサイズも変えておくと後が楽です。
③吹き出しを付ける
各種吹き出しツールで、セリフに吹き出しを付けました。
④視線の流れやコマの構図を考えて吹き出しを配置する
③の状態のままでは読みづらいので、適切な場所へ吹き出しを移動します。
この方法の何が時短に繋がるかというと、吹き出しに隠れる部分はペン入れをしなくて良いという点です。
逆に言えば、苦手なパーツに吹き出しを乗せてしまえば、そこは描かずに済むわけです。笑
自分なりの原稿の進め方はあるかと思いますが、ぜひ取り入れてみてほしい手段のひとつです。
下書きを最小限にする
ペン入れ前の段階、下書きは私には不要であったため、ほとんど飛ばしていました。
何故下書きをせずに漫画を描けるかというと、ペン入れよりも下書きの方が上手く描けることが分かりきっているためです。
一般的な下書きはほとんどペン入れと同じような状況を指しますが、私はほぼラフ状態の下書きからペン入れを進めていた形です。
トーン貼りの最適化
コマ割りツールと同様、トーン貼りの作業も難しく、なかなか慣れることができませんでした。
そのため、トーン貼りの作業においても自分なりの技を編み出して実行していました。

この状態を主線とし、実例を紹介します。
濃度別に塗ってからトーン化する



衣服・髪の毛など、トーン濃度が決まっている部分はこの方法で進めていきます。
①トーン化する部分を濃度ごとに塗り分ける
このとき、コマ内の絵柄(主線)は1枚のレイヤーかフォルダにまとめています。主線よりも下の階層に新規フォルダを作成し、濃度ごとに1枚のレイヤーとして塗り分けていきます。
②フォルダ自体をトーン化する
グレースケールで塗ってからトーン化する


頰や性器・目の粘膜など、血色部分のトーンは主にこの方法で進めています。
①グレースケールで塗る
先程の濃度別のトーン化と同じく、主線よりも下の階層にレイヤーを作成しました。筆ツールやぼかしツールを用い、グレースケールで塗っていきます。
②トーン化する
「レイヤープロパティ」→「トーン」でレイヤーをトーン化します。
参考 レイヤープロパティの基本CLIP STUDIO
印刷所テンプレートを使わない
ひと昔前に比べ、「サイズと解像度さえ合っていれば規定のテンプレートを使わなくても良い」という印刷所が増えてきました。
私はこの恩恵に預かり、印刷所テンプレートを使わずにCLIP STUDIOの設定のみでテンプレートを作成していました。
原稿の作成方法について、詳しくはこちらをご覧ください。
参考 新規ファイルの作成CLIP STUDIO原稿を作成する際は、印刷所の原稿規定をよく確認し、塗り足しや解像度を正しく設定してください。
また、規定テンプレートの使用が必須な印刷所ではこの方法はとれませんので、注意が必要です。
片手用デバイスを活用する
CLIP STUDIO TABMATE
CLIP STUDIO販売元より、公式の片手用デバイスCLIP STUDIO TABMATEが発売されています。
これがあるのとないのでは、かなり原稿の速度が変わります。
私自身は右利きで、左手では箸も持てないほど不器用なのですが、このコントローラーは単純操作のみで使用できるためストレスフリーで作業ができます。
例えば、コントローラーのAボタンには「戻る(取り消し)」を割り当てています。
原稿を進める上で「一段階戻りたい」と思ったら、Aボタンを押すことで即座に「戻る」が完了します。
ひとつの動作で短縮される時間はツール切り替えの手間のみなので、それぞれ1秒以下です。
しかし、長い原稿作業の中で何度も繰り返すことにより、通常の何倍も早く脱稿できる訳です。
価格も5000円程度と手頃で、おすすめの一品です。
itelte
itelte(アイテルテ)はスマホを片手デバイスにするアプリです。
itelteは、指先のジェスチャーを検知するスマホ版itelteと、それを受け取ってPC上でショートカットコマンドを実行するデスクトップ版itelteから構成されます。
PCアプリごとに、様々なショートカットを割り当てることができます。
iPad proでの作業にも対応しているので、出先での作業が多く、さらに効率化を目指す方にはかなり役立つデバイスであると言えます。
例えば、このようなジェスチャーに対応しています。

使用は無料ですので、CLIP STUDIO TABMATEは敷居が高いという方はこちらのアプリを活用してみてください。
参考 itelteスマホを片手デバイスにするアプリDL素材を活用する
CLIP STUDIO ASSETSでは、CLIP STUDIOで使用できる素材がダウンロードできます。

素材を使わずに自分の手のみで描き上げたい、という気持ちは痛いほどに分かるのですが、それ以上に締め切りが迫る方が痛いです。
手で描くと難しい炎などの効果や花の装飾素材からモブまで、多種多様な素材が配布されています。
これらのDL素材も、必要に応じて活用することで、原稿の時間を短縮できます。
参考 ベタ修正ペンCLIP STUDIO ASSETS参考 ゆるゆる手描きのふりかけブラシCLIP STUDIO ASSETS
参考 カケブラシとトーン◆CLIP STUDIO ASSETS
あとがき
以上、中の人なりのマンガ原稿の時間短縮テクニックでした。
ご覧頂くと分かるように、本来行うべき工程を飛ばしたり、本来の使い方ではなく自分なりの使い方を見つけていくことで、これらの時短テクニックは成り立っています。
それぞれのテクニック毎に向き不向きがあるかと思いますが、ぜひ気になったものは試してみて、そして取り入れてみてください◎
それでは、新刊原稿頑張ってください!